相の股隧道(蟹田側坑口)
地図A地点の上には県道鯵ヶ沢蟹田線の旧道が通り、その排水施設がある。
A地点から前へ進むと前方に建物がある。この辺りの道路は軌道跡と思われる。
建物の正体は、工事の現場事務所であった。地図と現地のの地形を比較すると、この事務所の奥に隧道があるようだ。
いよいよ地図B地点から隧道を目指す。さっそく笹薮が現れた。幸いそれほどでもなかったので無事通過。
沢になっているため、あちこち水が流れている。調査したのは5月前半であったので、雪解け水のため水量が多いのであろう。
笹薮を通過すると一面湿地である。少しでも地面の硬そうなところを慎重に進んでいく。
水芭蕉の花が咲いている。「あ~、きれいだな。」などと言っている場合ではない。
なぜなら、水芭蕉があるところはすべて湿地であるということだ。足を付く場所を間違えると、一気に沈んでいく。あっという間にトレッキングシューズの半分ほど沈んでしまった。スニーカーなら完全に泥の中だ。
辺りを見回しても、軌道跡と思える場所は見つからない。沢になっているため、泥が堆積してしまっているのだろう。
相変わらず水芭蕉が咲いている。一見乾いているように見えるが完全な湿地である。
さらに進むと、両側が斜面となって、中央が一本の小さな川になっている。何か人工的な感じがする。中央の川になっている部分が軌道跡なのではないか。
期待しながら、さらに前へ進む。
ついに、相の股隧道の入り口が見えてきた。
しかし、ここから隧道に接近するのが大変である。中央は川になっており、通行不能。左側斜面は土砂崩れ状態でちょっと無理。
結局、右側斜面から接近することにしたが、ここもかなりの湿地であるが、何とかクリアしてやっと坑口に到着。
相の股隧道は、半分土砂に埋もれている。
相の股隧道は、もうひとつの六郎隧道とともに、日本で最初に作られた森林鉄道の隧道である。前例がないために、当時の地方鉄道の規格で作られたというこ とである。そのため、森林鉄道の隧道としては非常に大きいものとなった。これでも単線なのである。
相の股隧道の長さは187.3mであるが、向こう側の明かりはまったく見えない。この隧道は内部で閉塞しているのは間違いない。坑口周辺は完全に水没しているが、山行がのヨッキれん氏の写真の解析によると、内部は完全に水没しているようだ。
この蟹田側坑口は大規模な土砂崩れがあれば、いつ埋没してもおかしくはない状態である。貴重な明治の土木建造物として、何らかの保護対策が必要ではないだろうか。